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 鬼ってなんだろう。悪いもの。怖いもの。怪物。みんなはどんなイメージを持っているかな。ぼくの思い浮かべる鬼は頭に角が生えていて、牙があって、目がギョロっとしていて、体がものすごい大きくて、筋肉ムキムキで、しましまのパンツはいて、トゲトゲのついた太い棒を振り回して暴れまわって乱暴する悪い奴です。小さい頃に読んだ絵本やマンガ、テレビで見たことがあるイメージです。桃太郎のお話の中にも出てくるよね。でも、本物の鬼は見たことがありません。みんなは本物の鬼を見たことあるかな。本物の鬼は見たことないけど、鬼って聞くだけでなんか怖いし、悪いものって気がするよね。なんで怖いんだろう。なんで悪いものなんだろう。

 自分の良く知らないものや理解できないものって怖くない?なんとなく怖いし、なんとなく関わりたくない。わからないものって怖いものだよね。

 小さい時、夜トイレに一人で行けなかったんだ。暗いところに何がいるかわからくて怖かったんだよね。でも、ぼくのお母さんがトイレの掃除をしたら行けるようになるよって教えてくれたんだ。理由はわからなかったけど、掃除したの。トイレの神様か仏様が喜んでくれて勇気をくれるのかなって思ったの。掃除したら、確かに夜トイレに一人で行けるようになったんだよね。でも、掃除しているときに神様や仏様は見当たらなかったよ。特に変わったこともなかった。でも、便器の裏がどうなってるのか、水のタンクの下、下敷きマットの木目とか、それまで気にもしなかったことを知ることができたんだよね。そして、トイレの中のことを知って、不安に思うようなものは何もないってわっかったんだ。

 昔の人は見たこともない髪の毛の色をして、青い目をして、体が大きい西洋から来た人を異人とか鬼と言って怖がっていました。話す言葉も聞いたことのないもので、何を言っているのかわからない。人を食べるなんて話もあったようです。でも、実際に会話したり、生活するうちに、同じ人間だって気づいたんだね。もちろん、人を食べるなんてことしません。西洋人のことを知らなかったから、不安に思い、怖がってしまったんだね。

 世の中には自分の理解を超えること、未だ知らないことはいっぱいあります。多くのことを、しっかりと知り、理解できるとそれらをやみくもに恐れなくなります。知らないままで、理解しようともしないと、いたずらに怖がったり、嫌ったりしてしまいがちです。しっかりと向き合い、学び、理解することで、好きになったり仲良くできたりします。これまで経験したことのないものや、自分の持っている常識とは違うことがあることを知ることができます。

 もしかしたら、ぼくがイメージしていた鬼は家族があって、小さな子供を育てていて、鬼同士で仲良く遊んでいるのかもしれない。鬼からしたら、ぼくたちの方が鬼なのかもしれない。普段の生活で、しっかりと知っているわけでもないのに勝手に恐れたり、不安になったり、嫌ったりすることがあると思います。でも、それは思い込みかもしれません。知らないものを正しく知り、理解することを大切にしてほしいと思います。

建長寺派  帰一寺 田中道源和尚

学生時代に出会った和尚様の影響で僧侶の道を選びました。 地域の繁栄と幸福、心の拠り所を目指して住職をしています。

山梨生まれ  慶應義塾大学卒  臨済宗妙心僧堂掛塔
現在、松崎町の建長寺派帰一寺住職、松崎町議会議員、松崎町観光協会理事

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